大阪のしがないおじいさんの日々のブログ

大阪のおじいさんの老後ブログ

映画

マトリックス レザレクションズがつまらなすぎたので感想レビュー

投稿日:

マトリックス レザレクションズ,感想,レビュー,つまらない,面白くない

私の一番大好きな映画は近未来SFです。AKIRA、ブレードランナー、JM、トータルリコール、どれも素晴らしい映画でした。特にAKIRAは私の今なおナンバーワンのフェイバリット映画です。しかしそれに非常に近い位置にいる映画があります。それがマトリックスです。
1のCMでの弾除けの映像は若い私の心を鷲掴みにしました。全3編を合わせて12回映画館で見たほどその衝撃はすさまじかったです。私が1つの映画を複数回見たのは後にも先にもマトリックスだけです。

3の衝撃から18年。まさかの大復活に心が躍りました。「またあの衝撃を新たな気持ちで感じれる」「この平凡に染まった脳みそに栄養を与えられる」、そう感じました。

しかし初めて発表されたトレーラーを見てその喜びはつかの間のモノになります。
マトリックス レザレクションズのトレーラーを見て私が感じたことはこの一言に尽きる。

「ダサい」

その不安は次々と発表されるトレーラーで確信へと変わっていきます。「これは絶対に外れ映画になる」
結果コロナも相まって私はマトリックスという映画で初めて映画館へ行きませんでした。

そしてようやく少し仕事が落ち着いた昨夜、アマゾンプライムにて190円でマトリックス レザレクションズをレンタルし、視聴しました。
予想は的中し、あまりのグダグダに一回では見る事が出来ずまさかの4回に分けて努力してようやくすべてを見終わりました。
感想はまさにトレーラーを見たときの感想と同じ、「ひどい出来」です。

物語は今まで通りのデジタルと哲学の融合という感じでそこまで違和感はないです。しかしそこに2から派生する「愛」というテーマが3編以上に重要視されています。そしてそれは母なる愛という形に昇華します。その理由は簡単で、この作品自体が作者であり監督のラナ・ウォシャウスキーの他界した両親への惜別の作品だからです。エンディングのスタッフロールの途中にその文言はさっと表示されます。

私はマトリックスが好きだがはっきり言って物語がそこまでよく出来ているのか?と問われればNOです。現実世界を維持するためにデジタルの世界があり、そこで人間は培養されていることも知らずにそれを人生だと感じ、決まった法則の中で生き続けている。という最大のテーマ以外はそこまで大したことない物語です。PC用語が飛び交い、その中に哲学や思想、理論が飛び交う不思議な世界観をフィーリングで楽しむというのがマトリックスの楽しみ方です。マトリックス レザレクションズの物語も前3編とテーマこそ違えどそこまでケチをつけるポイントはありません。
ではなぜここまで駄作になったのか?

それは映像の劣化です。

マトリックスの最大の売りはやはり映像美です。上記した不思議な世界観は一歩間違えると理屈っぽさが前面に出すぎてその理屈に説得力がなくなり、見る方はうんざりするのですが、理屈とエンタテイメントの接着剤となってきたのが今までになかったSF表現でした。その映像があるからこそ全編を通して描かれる理屈っぽさが意味を持ち始めます。そしてそれはマトリックスを代表する世界観となってユーザーに認知されたと思います。
しかしマトリックス レザレクションズはその映像美が一切ありません。いったいどうした?本当にその問いかけを148分ユーザーは感じ続けることになります。

全てにセンスがなくなったマトリックス。配役、ファッション、小物、発想、カット、画角、セリフ、特殊効果、表現、全てにおいて全3作を超えるものは一つもありませんでした。全てにセンスがなく、全てがダサい、全てが不快と私は言い切ります。マトリックスファンがインディーでマトリックス映画の続編を作り、それを観ている気分になります。

以前であれば使用するガラケー1つにとってもこだわりがありました。かけているサングラス、スーツの色味も素晴らしかった。配役も適材適所ですべての意味があった。今回の配役はなんだ?別にモーフォイアスもスミスも物語上で言えば同じ俳優である必要はないが、配役されたキャストの見栄えの説得力があまりに薄くファンとしてはがっかりせざるを得ないのである。内訳を聞けばローレンスフィッシュバーンはキャスティングに積極的だったようだが何故か配役されなかったそうだ。裏に大きな駆け引きがあったんでしょうが残念です。

アクションシーンの割り当て時間も大体今までと同じだが、まあ、つまらないカットに編集でうんざりします。あまりのひどさに笑ってしまった。映画館でなくて良かったです。全く想像力のない人たちがマトリックスを撮るとこうなるんだなという反面教師にはなります。一生懸命過去のマトリックスを見て作っているから、それ以上になりませんし、作り慣れていないものだから品質は劣化します。センスもない。発想は面白いのですがそれが映像として伴っていなんですよ。すべて普通のアクション映画の画面。それをマトリックスの映像として使うので本当にダサいダサいダサい・・・。

私はスタッフを確認しました。
やはりというべきかそこにはジョエル・シルバーの名前がありませんでした。一見マトリックスといえばウォシャウスキーと思われがちだが、私はそうは思っていません。その世界観の表現はジョエル・シルバーのたまものなんですよね。この方、AIRA好きを公言しており、最新3Dを使った近未来SFの表現の父といっていい存在です。そんな彼がいない、そして合わせてその世界観を確立してきた撮影のビル・ポープも編集のザック・ステンバーグの名もなかった。まさにラナ・ウォシャウスキー一人での世界観の構築になった。しかしその結果がこれ。だからこそいかに今までのマトリックス3部作の映像美がウォシャウスキー姉妹の手柄ではなく、そういった視覚効果のプロたちによる産物であったかがよくわかると思う。
ウォシャウスキー姉妹が彼らと組まずに制作した作品すべてが物足りないと感じるのも同じ理由である。多分ラナ・ウォシャウスキーが今までの作品を参考にして一生懸命考えたり再現したマトリックス感がこのレベルであったと言う事。

そしてこの映画の足を引っ張る要素の一つしてあげられるのが編集の下手糞さである。無意味なシーンがあまりに多すぎる。全148分だが実際には100分で良い作品だ。マトリックスに染まった主人公を描くにしてもあまりに長すぎるし、その表現もこれまたセンスがないのである・・。馬鹿なC級映画のような場面も長々と見せられる苦痛は信じられないストレスを感じさせます。

ウォシャウスキー姉妹はマトリック以降は度重なる失敗(Vフォー・ヴェンデッタはマトリックスでの成功のおこぼれ)で信用を徐々に落とし、ジュピターの大失敗でその信用は地に落ちたと言っても過言ではない。その中での起死回生としてマトリックスを利用したというのが本音かなと感じる。それに加え両親の死という苦しみから抜け出すために作品にその思いをぶつけたかった、しかしその思いだけではまた作品は失敗する、だからこそその題材をマトリックスにして成功する可能性を持たせたんでしょう。

初めにも言った通り私はその思いで作られた物語でも良いと思っています。実際物語は面白くないことはないです。トリニティが全ての力の源だった。母なる女性が救世主の根源だった、最後の最後まで自分を信じてくれているのは母親、全ての正義は母親、母への愛を描くのは別に構わない。デジタルの世界に母性を持ってくるのは逆に面白いとさえ感じます。しかしそれを表現する最大のラストシーンであのくそだっさい映像を見せられたら、笑ってしまいますよね・・・。あのダサい映像にオーケストラをいれるんだからもう壮大なコメディです。

映画界には同性愛を公表している監督は多くいます。私の敬愛するブライアン・シンガーもバイセクシャルを公表しており今後はゲイになると公言しています。私は日本でもゲイが好きです。それは性的にではなく彼らの思考が大好きなんです。ブライアン・シンガーもそうですが、ゲイだからこそミュータントの気持ちがわかるんですよね。ゲイは生殖器を切っていないので体は男性、心は女性です。だからこそ自分の中に複雑な要素が多く渦巻いています。それはノーマルよりも非常に繊細で非常に多角的です。感情や評価も一般人よりも2倍感じ取る力を持っています。だからこそ作品は非常に繊細になります。

しかしウォシャウスキー姉妹はどちらも振り切ってしまった。つまりは一方向になってしまった。私はこの二人の天才の面白さが消えてしまった理由はそこにもあると感じています。生き方としては素晴らしい決断をしたと思います。それは誰にも非難されることではなく称えられるべきことだと思います。しかし作家としては感受性が狭まったと思わざるを得ないです。人生を取り作家の能力を失った彼女たちにこの先過去の自分たちを超える作品は作れるのでしょうか。

そしてマトリックス3部作を超える衝撃的な映像を誰が次見せてくれるのでしょうか。それは私の生きている間に見ることはできるのでしょうか。今後の新たなる作家たちに期待したい。

さらに謎なのがこの程度の映画で制作費が何と1.9億ドルなんですよね。1が6300万ドル、リローデッドとレボリューションのあの世界観でそれぞれ1.5億ドルです。いったいこのマトリックス レザレクションズのどの部分で1.9億ドルもかかるのか?3Dははっきり言って過去作品の使いまわしです。本当に呆れるしかありませんよ・・。今までの失敗作品分の借金返済分を制作費として上乗せさせらたのかな?そうだったらまだわかりますけどね。映画界ではこの手の話はよくあることなのでその可能性もあります。

かなり厳しく書いたがこれはマトリックスという作品を愛すべき一筆者が書いたもので、ウォシャウスキー姉妹を侮辱するものではありません。あくまでマトリックスを愛し、期待した人間が過去作品と比べ評価した文章でしかありませんのでそこはご了承ください。この作品を素晴らしいと感じた人を非難するものでもありません。これは私の感想です。



-映画

Copyright© 大阪のおじいさんの老後ブログ , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.