朝の連続NHKドラマ、虎に翼、楽しく見てきましたが少し前からちょっとづつ「??」と思う部分が増えてきて、第7週35話が極めつけになり見るのをやめたのでその理由を記載しようと思います。
かなり長い間このドラマは起承転結が上手に描かれていて久しぶりに違和感を持たずに見れるTVドラマだなと感じて嫁さんと楽しく一緒に見てきましたが主人公である猪爪寅子の言動の違和感がどんどん大きくなってきました。
私の爆発ポイントの一端が33話。誰が見ても相思相愛だった花岡が佐賀から上京しその横には婦人がいた。これについて寅子は動揺を隠しきれず、同級生である轟とヨネは花岡を糾弾するのだが、私からすればこの状況に「あ、はて?」と思う。
話の内容はまるで花岡一人が悪いように言われるのだが、そもそも花岡を確実に好きであった寅子が佐賀についていこうとしなかったのは自分の夢を捨てれなかったから。寅子が涙目で見送ったあの別れシーンがそのすべてである。あのシーンはとても切なかった。
花岡は寅子が本当に好きだったからこそ付いてきて欲しいとは言えなかった。そしてついて来いと言っても来ない、夢を一生懸命追いかけるからこそ寅子であって、そんな寅子を好きになったのだ、だからこそお互い付いていきますとも付いて来いとも言えなかった、だからあの沈黙が切なかった。お互い夢を追いかける中、運命は二人を引き裂いたのだ。
その寂しさを紛らわすため別の誰かを好きになることが何がいけないのか?寅子だってその後一度だって花岡を思い出したシーンなど無いし、佐賀に出向いたシーンもない。ひたすら自分の夢を追いかけた。
なのに何故花岡だけがあんなに糾弾されるのか?そして寅子も寅子で何故ショックを受けるのか疑問です。
ここまであまり疑問がなかったドラマだっただけに非常に違和感を感じた。
更にこれをきっかけに寅子のキャラが暴走する。
自分が弁護士の仕事を受けれないのは社会的地位が無いからだと言いはじめ、突然見合いを親に申し出る。見合いは失敗に終わり、その事を聞きつけた元書生の優三が結婚を申し出る。寅子は優三に対して愛がない、社会的地位を得るためだけの結婚であると言い張る。男が女を召使にするために結婚をするのに女性が社会的地位を求めるために愛がない結婚をして何が悪いと言い張るのである。
「あ、はて?」
寅子ってなんで弁護士になったの?
世の中で法律的にも社会的にも虐げられている女性たちの姿を見たのが初動、そして弁護士になる記者会見場では弱い人の立場に立てる弁護士になるって宣言していましたよね。
しかし寅子の結婚って自分でも言っている通り、この時代の男性と同じことをしているんですよ。つまりこの時代の強者と同じことをしているんです。
虎に翼の脚本家吉田恵里香さんは虎に翼についてかなり多くの取材を受けています。
その中で「寅子を完璧な主人公として描かない、そんな不完全な人でも声をあげる社会への提言」「女性差別だけでは社会は動かない、男女を越えた社会のシステムへの変化への提言」と言う事を答えておりました。
「あ、はて?」
確かに完璧な人以外は声をあげてはいけないのか?私もそれは同感です。人は完ぺきではないので色々な失敗をする生き物でスーパーヒーローイズムのようなものを描いてもつまらない。だからそこにリアリズムを付け足すのは良いが私の違和感は「寅子の不完全なポイントは全て周りが肯定化して寅子はいつも間違った言動で一切デメリットを受けないところ」です。
発言には必ずリスクと責任を負います。発言することで論破されるのも人生です。そしてそれによって自分の至らなさに気付くのも非常に大事な事です。しかし寅子というキャラには絶対的にそこが欠損している。
上記したように花岡に対して自分は夢を追いかけ彼の想いに応えなかったのにそこは誰からも咎められることはない。優三とのおかしな結婚もそう、いつもそれを肯定する家族や仕事場の同僚がいて自身の異常な言動でダメージを受けないのです。それがいつも通ってしまう。
これって吉田恵里香が話す「不完全な人の発言」ではなく、無敵の人のやりたい放題。と言う事になる。自分のやりたい放題やって周りを振り回すが自分の事は誰も咎めないし人生的リスクも背負わない。無敵の人が寅子である。脚本家が言う不完全な人って家族であり優三です。彼らは寅子に振り回されてもいつも黙って彼女を支えてきた。しかし皆意見を言わずに黙っている。この人達こそ吉田恵里香が話す「黙って損をする人達」ですよね。
つまりこの違和感に気付けない吉田恵里香という人間は、今までの人生であまり躓いた事が無いのかもしれない。自分勝手な発言の周りにはいつも優しい男が周りにいて意見を出さなかったんだろう。だから寅子の異常な設定に本人が気づけていない。いや、気づけないんだと思う。もっとも面倒なのはその人間が「自分は弱い立場」って勘違いしている所。自分は恵まれているのに自分は弱い立場って勘違いしている、まさに寅子のキャラと同じである。
私が感じた違和感はまさにここにある。
社会的にも人間的にも弱い女性寅子。そんな彼女が社会を敵に回しながらも奮闘する姿を描いていると思いながらも、実際には寅子を大事にする男性たちの力によって常に守られている状態で社会と戦っているんです。
で、面白いのがこのドラマを推している人達って実は女性進出いえーーい!の人達なんですよね。でも皆さん気づいていないんですよ。自分たちが一番嫌いな人間像が寅子ってこと。寅子の設定はまるで反男性派のように見えているが、実は反男性派の人達が一番嫌いなかわいい子ちゃんキャラなんですよ。どんなわがままをやっても馬鹿をやっても周りの無能な男性がよしよししてくれるあのダメキャラなんです。
つまり皆さんも一見寅子が掲げているように見える「女性頑張ろう!男性社会NO」の看板に踊らされているだけ。
で、見るのをやめる前にこの猪爪寅子という人物を調べてみました。
そしたら驚きの事実が判明。
何と猪爪寅子のモデルとなった三淵嘉子さんは寅子とは全く違いコイバナに花を咲かせるほど恋愛に興味を持った方で、ドラマの設定とは真逆で結婚願望を持った女性でした。私はこれを知って愕然としました。
何故三淵嘉子さんという人物をここまで陥れないといけないのか?男尊女卑を誇張するために主人公を徹底的に反男性化に化身させることに意味はあるのでしょうか?このドラマの作者は女性ですが、男性批判をするために三淵嘉子という人物を勝手に反男性派の象徴としている事こそが最も女性を差別していると感じました。
私はもう見るのを止めますが多分この脚本家の人間性で描くのであれば今後もこういった根本的なおかしさはずっと続くでしょうし、下手をすれば今支持している女性推進派の人たちも個人レベルでは違和感に気付きだすでしょう。そうなったとき、ようやくこの記事にも注目が集まりだすと思います。